2015年2月27日金曜日

【それはまさに一瞬である】 『6才のボクが、大人になるまで』

すべての瞬間に、大切は宿ってる



[作品情報]

タイトル:6才のボクが、大人になるまで(原題:BOYHOOD)


監督:リチャード・リンクレイター
脚本:リチャード・リンクレイター
制作:リチャード・リンクレイター


出演:エラー・コルトレーン、ローレライ・リンクレイター、パトリシア・アークエット、イーサン・ホーク


公開:2014//11/14


ストーリー
父母の離婚後、姉サマンサとともに母親オリヴィアに引き取られ暮らすメイソンJr.は6才。ある日、オリヴィアは祖母が住むヒューストンに引っ越すと言い出す。仲のいい友人に何の別れも告げられずに旅立つことになってしまうメイソンJr.。ヒューストンに移ると母親は大学に通い、新たに何かに挑戦する様子。アラスカに旅に出ていた父親 メイソン・シニアが戻り、彼らの引っ越し先に定期的にやってきて子供達をボーリングに連れて行ってくれたり楽しいひとときを過ごす。そんな折、大学に通っていたオリヴィアがウェルブロック教授と付き合いはじめる。教授も離婚し、2人の子持ちである。やがて2人は再婚、それぞれの子供達と一緒の生活が始まるが...(wikipedeiaより)


[予告編]





一瞬は常についてくる

ついこの間アカデミー賞授賞式があり、ニール・パトリック・ハリスの司会のもとで大盛り上がりを見せました。

今年の作品賞は『バードマン』が受賞したわけですが、twitterなんかで盛り上がっていた映画ファンによる事前の予想では『バードマン』かこの『6才のボクが、大人になるまで』が作品賞を獲るだろうという予想が多かったと思います。つまり、惜しいところで作品賞を逃したのが、この作品と言えるかもしれません笑

僕は『バードマン』をまだ観ていないので何とも言えないのですが、この作品もかなりいい映画だったように思います。


まず何がすごいって12年間も断続的に映画を撮り続けたことですよね。

例えば有名な作品だと『ハリー・ポッターシリーズ』が約10年に渡って同じキャストで撮り続けましたが、このシリーズは毎年撮っては毎年公開するという形。

対して『6才のボクが、大人になるまで』は12年間撮影したものを1つの作品としてまとめたわけですね。

つまり映画の中の登場人物たちの12年間がぎゅーっと2時間45分に凝縮されているわけです。

そして、そのぎゅぎゅっと凝縮された時間をぼくたちは追体験することができる。

しかも自然に。

どうしてそれが可能なのかというと、映画の中での現在がいつなのか、明確に表示されていないんですね。

普通は「1999 KYOTO JAPAN」とか「12years later...」とかテロップが入るじゃないですが。それが一切ない。

時期が変わったり、年が変わったりっていうのが切れ目なく続いていて、僕たちは登場人物の変化から年月の経過を実感するしかないんですね。

「メイソンもついに声変わりか」とか「ママちょっと太ったかな」とか「サマンサは髪型変えてもぶちゃいくだなあ」とか笑

そういうとこから感じるしかない。というか、感じられるようにしてある。きっとわざとですよね。

実際のところ僕たちが日々生きてるのもそんな感じじゃないですか。1年前の写真を見てみたら意外とすごい違和感があったりとか笑 よくありますよね笑

月が変わったからってテロップなんて出てこないし、みんなが少しづつ痩せたりあるいは太ったり、少し髪型が変わっていったり…。

本当は時間ていうのはそういうもんです。

そしてこの映画は、主人公と友達の女の子がまさに時間について語るところで終わります。

二人のセリフが象徴しているように、この映画が長い時間をかけて撮影された意味が、この最後の一瞬に生きてきましたよね。

一瞬。それこそが、この作品のテーマです。


個人的に良かったなあってシーン

アカデミー賞作品賞は逃した本作ですが、母親役のパトリシア・アークエットが助演女優賞を受賞しました。まあ納得ですよね。

12年間を通して理想の母親としての姿を模索する役を見事に演じきったと思います。

個人的に一番よかったのは、メイソンが家を出るときに初めて撮った写真を捨てようとして悲しむシーン。

メイソンは母親の影響をかなり受けて育っているはず。彼女がどうしようもなくなった時、すべてを切り捨てて生きてきたのをメイソンは12年間見ています。絶対に影響を受けている。12年間はそれほど長い。

ママもそれを分かっているはずで、だから余計にあのシーンは切なかった。


それとメイソンが最後に女の子とハイキングをするシーン!あそこもよかった。

父親に言われた「女の子なんて質問攻めして話を聞いてあげればそれでいいのさ、ははーん」を見事に実践してましたね笑 (父親を演じるイーサン・ホークもやっぱり良かった)


なんというか話自体が派手でもないしものすごい長尺でしたけど、とても上品に静かにまとめられてて、ただ「いい映画だなー」と思った、そんな作品だったと思います。
 

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