2014年1月9日木曜日

『ワールド・ウォーZ』 感想レビュー

ブラッド・ピットが本気になって作ったゾンビ映画!



 
 
 
[作品情報]
 
タイトル:ワールド・ウォーZ(原題:WORLD WAR Z)
 
 
監督:マーク・フォースター
脚本:マシュー・マイケル・カーナハン他
制作:ブラッド・ピット他
原作:マックス・ブルックス『WORLD WAR Z』
 
 
出演:ブラッド・ピット、ミレイユ・イーノス、ファナ・モコエナ、ジェームズ・バッジ・デール、デヴィッド・モース、ルディ・ボーケン、ダニエラ・ケルテス、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ
 
 
公開:2013/08
 
 
ストーリー
フィラデルフィアに住む元国連職員のジェリー・レインは、妻と娘たちを学校に送るため自動車に乗っていたが、途中で交通渋滞にはまってしまう。いつもとは何かが違う雰囲気に気付きジェリーが車から降りると、たくさんの人々が車を放棄して何かから逃げていた。実は人間を狂暴化させる謎の疫病が世界各地で流行しており、その感染がフィラデルフィアでも始まったのだ。ジェリーたちの家族はゾンビ化が進む街を離れて安全な場所を探し始めるが、国務事務次長からジェリーに連絡が入り、現場への復帰を要請される。次長から派遣されてきたヘリコプターに乗り米海軍の艦へ逃れるジェリー一家だったが、艦は軍によって仕切られており、現場への復帰を拒めば家族を安全な艦の中に留めておけない、となかば脅されたジェリーは疫病の正体を探るため前線へ繰り出すことになる。

 
 
 
 
 
 
[予告編]




製作費なんと200億円!!破格のゾンビ映画


ということで、『ワールド・ウォーZ』のレビューです。

突然ですが、この映画がゾンビ映画だと知って観に行った人はどれくらいいたんでしょう??

もちろん映画好きの方ならばこの映画がゾンビものなんだぞ!っていうことはご存じでしょうけれども、ブラピの家族愛を描いた感動系かと思って夏休みだしと家族で観に行ったらエライ目にあった。なんて人も多かったのではないでしょうか?笑

それもそのはずなんです!笑

この映画日本では、ゾンビものだってことを隠して宣伝してました。

映画評論家の町山智浩さんもこのことに苦言を呈してましたね。

実際僕も映画好きでなかったならこれがゾンビものだなんて思わないはずです。

そして、ゾンビものだって分かったら観に行ってなかったかもしれません。

こんな風に、ゾンビものだと知ったとたんに観に行かなくなるお客さんって多いと思うんですね。特に日本では。

実際に観てみるとものすごくグロイ!とかとてもとても痛々しい!てほどではなかったんですが(それならアウトレイジとかのほうが痛々しい気がしますw)、やはりなんとなくゾンビは敬遠されるんでしょうね。ゾンビものはまだサブカル的な位置づけなのかなーと思ったりもします。

かくいう僕もゾンビものにはあまり手を出せず、『バイオハザード』か『桐嶋、部活やめるってよ』くらいしか見たことがありません。なんとなく、敬遠してしてしまっているのですね……。好き嫌いや偏見はいけないと分かっているのですが……。

そんなこんなで、ゾンビと聞いただけで面白くないと決めつけるのはやめようと一歩足を踏み出して観てみたこの作品。思わぬ発見がたくさんありましたよ!笑

まず、ゾンビは皆さんご存知の通り、ゾンビに噛まれることで感染し新たなゾンビになるわけですけれど、これってつまり普通の感染症と同じ原理ですよね。

感染する方法がゾンビに噛まれるというちょっと物騒な方法で、症状が人を襲うようになるというちょっと突飛なものであるだけで、インフルエンザやノロウィルスといった身近な感染症と変わらないわけですよ。

また、最近中国ではPM2.5とかいう大気・水質汚染による環境の悪化が問題になっていますが、何年か前に猛威を振るった鳥インフルエンザの発生もここ中国からでした。今思えば、中国の急激な開発に伴う環境汚染が関係していたのかなとも思いますが、この作品ではここにも触れています。

映画では最初の感染が報告されたのは韓国ということになっていますが、中国でも公開されることを踏まえて変更された設定なんですね。初期段階でも原作でも、発生源は中国の内陸部とされていました。鳥インフルエンザと一緒なんですね。

つまり作品中でのゾンビは、近年の発展の陰にある、大気汚染などの弊害の象徴的なものではないか、彷彿とさせるのではないかと思うのです。

それから、作中ではイスラエルは壁を建造して助かっているという描写(進撃の巨人みたいな話ですけどw)がありますが、最終的にはZに侵入されてしまいます。その原因となったのがイスラエルが壁の中に受け入れた避難民。彼らが発する音に呼び寄せられて侵入してきたわけですが、ここにもメタファーのようなものがあるわけですね。

というのも、現在のイスラエルの情勢を考えると分かりやすいのですが、現在あの地域にはユダヤ人の住むイスラエルという地域とアラブ人の住むパレスチナという地域の二つがあるわけで、領土問題というのは現在も続いているわけですよ。

現在は一応、イスラエル軍はパレスチナから撤退しようということになっているようですが、その撤退もなかなか進んでいないのが現状です。それでさっさと撤退しろよ!という風にパレスチナ側が反発して、一部の過激派などがガザ地区と呼ばれる地域などで爆破などの行為が行われているわけです。

裕福というか、一度はパレスチナにも駐留していたことがある強気なイスラエルと、未だに解決されない、撤退しないイスラエルに対して憤りを感じるしかないパレスチナの間にある、貧富の差というか経済的な格差。それが映画の中では壁の中で助かるイスラエルという形で表現されています。

またイスラエルに侵入してきたZにも、なかなか撤退しないイスラエルに反発しているパレスチナの姿が重なって見えるような気がするのです。

格差という点ではジェリーの家族が避難していた米軍の艦、というかアメリカという国にも当てはまることです。つまりゾンビから逃れて生き残るためには、対Z作戦に何らかの貢献をしなくてはならないわけですよ。

一般的に高収入でエリートと呼ばれる政治家だったり弁護士だったりというホワイトカラーの人々や知識人たちは、大げさに言ってしまえば必要ないわけですよ。人類が滅亡するかもしれないという脅威に立ち向かうのに必要なのは、銃を持った軍隊だったり、ウイルスの知識を持った科学者だったり、ジェリーのように現場経験が豊富な国連職員だったりするんです。

なので使えない人たちは艦から降ろされ、安全性の低い陸地へと送り返されてしまうんです。

これって、最近加速している学歴社会にある意味で警鐘を鳴らしていると捉えることも出来ると思うんですね。

作中ではウイルスの弱点として、致死性のあるウイルスに感染した人間ならZに襲われることがないことが分かります。これは、Zウイルスもウイルスであることに変わりはなく、ウイルスの目的は繁殖することなので、宿主としての人間が死にそうであればウイルスを繁殖出来ないと判断しているからだとの説明があります。

つまりウイルスは本来弱いものなんですね。何かに寄生しなければ繁殖することが出来ない。社会的弱者である(あくまでパレスチナ問題で考えた場合です)パレスチナや、ホワイトカラーではない人たち、ひいては人間そのものを象徴していると考えることができるわけですよ。

実際僕は最初、ゾンビ映画とはただ怖がらせたりグロテスクな映像を楽しむ娯楽作品だと思っていました。

しかし色々なことを考えながら観てみると、時に大気汚染を引き起こす公害として、時に学歴社会を脅かすものとして、世界を変える力を持つ「持たざる者」として、時代と共に広がり方を変える感染症として姿を変え、何度倒しても起き上がる(つまり解決されない)問題として、まさにゾンビのように我々に迫ってくるんです。

主演であり、この企画を立ち上げた人物でもあるブラッド・ピットの奥さんはアンジェリーナ・ジョリーですが、彼女は国連難民高等弁務官事務所の親善大使も務めており、貧しい国々の現状を知る活動家でもあります。

そういった背景を知ると、この映画の見方も変わってくるのではないでしょうか。


果たしてZたちとの戦いはどうなったのか


上ではゾンビがメタファーとしてどんなことを表しているのかを解説しましたが、今度はもっと作品とストーリーについて考えてみたいと思います。

イスラエルをなんとか脱出したジェリーとイスラエル軍女兵士はイギリスに不時着します。

不時着した飛行機で生き残ったのはジェリーと女兵士と一匹(それともひとり?)のZだけって都合が良すぎないか?wとも思いますが、なんだかんだとウイルスの研究所にたどり着きます。

そこでZに対抗する手段を発見し、ジェリーは家族のいるところに帰りまして、それから人類はどうしたこうしたってナレーションが入ります。

よしここからZ達を殲滅していくんだなと思っていたら……

「俺たちの戦いはここからだ!!」

ドン!!(エンドロール)

正直、ええって感じです笑

が、これにも理由があるんです。

元々、この『ワールド・ウォーZ』というのは原作があるんですが、この原作は物語ではないんですね。同じマックス・ブルックスによって書かれた『ゾンビサバイバルガイド』っていうトンデモ本というか面白本というかがありまして、それはゾンビにどう対処したらよいかなどが書かれている本なんです。

じゃあそんな本が必要になるような世界っていうのはどんな世界なんだと。そんな世界があるなら(ゾンビが存在してそれと戦う世界)人々はどうやってゾンビと戦ったのかということを、世界Z対戦を経験した人々から話を聞くっていう形でまとめられたのが『WORL WAR Z』って原作なんですよ。

で、それを映画化しようとブラッド・ピットとレオナルド・ディカプリオで権利を争ったんですが、最終的にはブラピが権利を勝ち取って、彼のプランBって会社で映画化したとそういうわけなんですね。

ブラピは最初の段階での脚本では、映画の最後にロシアの赤の広場でゾンビと戦うっていう設定にしていたらしく、実はそのシーンの撮影までしてあったんです。ですがそのシーンが結構血みどろの戦いであったり、それ以前のシーンにも結構グロテスクな描写があったりで、どうしても公開に当たってレイティングが厳しくなりそうだということになったわけです。

ブラピ本人は反対していたそうですが、プロジェクトチームとしてはなるべくたくさんの人に観てもらいたいという方向だったようで、グロテスクなシーンは極力カットして、ロシアでの戦闘シーンもイギリスの研究所のシーンに差し替えたということだそうです。

ゾンビに噛まれた女兵士の感染を止めるため、噛まれた手首をブラピが切り落とすっていう結構痛いシーンもありましたが、直接画面には映らず痛さを抑えていました。

このような措置をとった結果、最後のシーンが尻すぼみのような形になってしまっていましたが、多くの人に観てもらうためには仕方なかったのかなーと思ったり。

ですが今回の映画の成功で続編は決まっているようなので、今回カットされたロシアでのシーンも使われる日が来るのではないかと思います。

また、イギリスでのシーンを取り直したことによってなんと製作費がゾンビ映画では破格の200億円もかかっていますが、これはCGを多用しているからです。

イスラエルの街角でゾンビが波のように押し寄せるシーンや、壁を登ってくるシーンなんかにはたくさんのZが出てきますがあれはほとんどがCGによるものです。

下の動画を観ると、ゾンビがどのようにシュミレートされて書き込まれているかが分かります。



Z役の意役者についても、エンドクレジットを見ると分かりますが演者はごく少数なんです。

またこの役者さんたちのゾンビ演技がすごくって笑、その様子を収めた映像もどこかで見たのですが見つからないので、気になる方は探してみてください笑

お金を使いすぎた代償として研究所の実験シーンで、Zを呼び寄せるためにペプシの缶を音を立ててばらまくっていうところがありましたが笑、あれはお金が足りなくなったのでスポンサーとしてペプシに出資してもらったからだと言われていますw

そこまでしてレイティングをG(全年齢対象)にしたこの映画、考えながら観ると色々なメタファーが詰まっていますし、リアリティあふれる作品になってるなと思いました。

ちょっとばかしゾンビとの対決が物足りなかったけれど、そこは続編に期待という感じですね。


 

1 件のコメント:

  1. いつもブログ見てますよ(((o(*゚▽゚*)o)))
    自分も映画ラブです*\(^o^)/*

    ワールドウォーZは自分はゾンビだとは思っていませんでしたがゾンビものが好きなので
    よかったです!!

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